ドッグトレーニングと車の運転のキモはおなじらしい

イギリスのお散歩コースについて書こうと思っていたけれど、落ち込む出来事があったのでまたの機会にする。

20代で免許を取ってからというものずっとゴールド。ただし、「ペーパー」という冠がつく。車の運転はこの15年ほど、私のささやかな憧れだった。

買い物に行って、大きな荷物もヒョイヒョイっとリアに突っ込んで、「今日は天気がいいから、ちょっと遠くへお散歩行こうか」なんつって、犬を乗せてビューン。犬がドロドロになったら積んであるタオルでワシャワシャっと。迷子の犬を見つけたら「乗ってくかい？」と声をかけ。緊急時には遠くの救急獣医へ連れて行けるし、家にもしものことがあれば車中泊だってできる。

ああ、素敵。ああ、車が運転できないなんて本当の犬飼いじゃない。元気があればなんでもできるらしいけれど、車があればさらになんでもできる気がしてくる。運転できる人からしてみれば、「じゃ、すれば？」という感じだろうが、怖いものは怖くて、不甲斐なくもなかなか踏み出せない。とまあ、とにかく憧れだったわけだ。

そんな情けなかった私が、渡英直前に付け焼刃のペーパードライバー講習を受け、こちらで中古車を買い、おっかなびっくりのカーライフを初めてはや3か月。まさか異国で憧れが現実になるとは、思いもよらなんだ。とはいえ初心者に失敗はつきもの。順調に（？）車庫入れを失敗してバンパーに擦り傷を負ったり、サイドミラーに傷を付けたりしていたのだが、そんなのツバつけとけば治るよね！と思えるガリガリ傷を昨日ついにこさえてしまった。

花壇がね、思ったより大きかったのよねえ．．．曲がり切れると思ったんだけど、だめだったのよねえ．．．現場は知人宅の駐車場。負傷箇所は助手席ドア。しばらくあのガリガリという音が幻聴で聞こえそう。このまま封印したい記憶だけれど、今後の戒めとして記録しておく。

今日はドッグトレーニングの日だったので、またぶつけたらどうしよう．．．というブルーな気分を抑えてキャスカを乗せて行ってきた。イギリスの犬師匠ジョンが傷を見るや、やおら運転講習が始まり、他のメンバーが来るまで駐車場でクルクルと。

"Gently, calmly, always watch carefully and practice （おだやかに、冷静に、常に注意を怠るな。そして練習。）" 車のハンドリングも、大事なことはドッグトレーニングと一緒だよ、と諭された。カッコイイ。そのへんの人に言われたら、わかってるわいとヘソを曲げそうだけど、名人が言うと重みがあるわ。

ドッグトレーニングも運転も、雑なのとおっちょこちょいなのを減らしていくぞうと、落ち込んだ気持ちが少し上向きになったのだった。それにしても、赴任先が右ハンドル左車線の国で本当によかった。いいところだ、イギリス。いろんな意味で。

■でもイギリスの運転でどのへんが困るかというと・MATOME

• ウィンカーを出さない人が多い。まじめに恐怖を感じる。
• 路駐がものすごいことになっている。古い住宅が多くてガレージが小さいため現代の車は入れられない。みなさん路上に停める。車庫証明という制度は存在しない。
• 歩行者が堂々といきなり車道を渡る。でも、横断歩道じゃないところで人をはねても罪に問われないらしい（真偽不明）。でも、できればはねたくない。
• 意外とスピード狂。高速の制限速度が90～110kmのところが多く、もちろんみなさんもっと飛ばす。住宅街で60kmとかもけっこうふつうに出している。のろい私はしばしばアオラれるものの、無視（そしてこういうマイペースなドライバーも意外と多い）。

といっても全般的にはさすが紳士淑女の国。順番を守るのが大好きで、お互いさま精神が熟成しているなあという印象。本当に道をよく譲ってくれるし、こちらが譲ればドライバーも歩行者も笑顔とともに「おっ、ありがとう」の挨拶（親指をあげたり、手のひらを相手に向けて軽くあげる）をサラリとこなす。キマッテル。犬を連れていると、停まって車道を渡らせてくれるドライバーが多いのも、犬好きな国ならではと思う。上記のイヤなことにも、自分もそのうち慣れてくるのかしらん。でもウィンカーは出すけど。



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